映画は郷愁だ。<『ニュー・シネマ・パラダイス』研究報告>
はじめに
どうも、お久しぶりです!
元関西大学映画研究部で現映画チア部、絶賛就活中の大学生・大矢でございます。
映画館の活動再開に合わせ、過去の名作映画が続々と公開している今日、この頃。
その例に漏れず、往年の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』も、各地の映画館でリバイバル上映が行われています。
というわけで、今回は、映画研究部時代に不定期で執筆していた「午前十時の映画祭」の鑑賞記録シリーズ「映画は〇〇だ。」の続きとして、本作の見どころをご紹介。
本記事を読んで興味を持った方や、改めて観たくなった方は、終盤に記載してある映画館に訪れてみてください。
それでは、どうぞ!!
今回の作品
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
制作国:イタリア、フランス
上映時間:123分(劇場公開版)、175分(完全オリジナル版)
あらすじ
シチリアの田舎町。
映画好きの少年・トトは町で唯一の映写技師・アルフレードと親交を深め、映画館"シネマパラダイス"で忘れられない日々を送っていた。
いつしか成長し、映画館で働くことになったトト。
彼は人生を変える大恋愛を経験するが、そこには大きな壁が立ちはだかっていて……。
見どころ
本作の見どころは、なんといっても、個性豊かな登場人物たちと鮮やかで美しい町の映像美。
映画好き少年・トトとアルフレードの世代を越えた友情関係はもちろん、わずかな登場シーンながらも強い印象を残す町の人々の描写が素晴らしい。
大声を挙げながら劇場に入ってくる男性、上映中にいつも眠っているおじさん、目が合ったことで恋愛へと発展する男女……。
「映画館」という特殊な空間の中でドラマが巻き起こる展開は、他の作品にはない本作ならではの魅力といえるのではないでしょうか。
また、そんな本作を彩るのが、舞台となるシチリア島の美しい風景。
主人公が思い悩んだ時に訪れる真っ青な海
幼少期の主人公が通う学校
花火が打ちあがる夜道
これら、作品を構成する美しい場面の数々が芸術的で、映画が終わった後も深い余韻が頭の中に残り続けます……。
本作のテーマの1つに異郷のさびしさから故郷に寄せる思い、つまり「郷愁」が挙げられます。
実際の故郷ではなくとも、本作を観た後、誰もがそんな感情に浸ることが出来るのは、これら、愛らしい登場人物や風景が持つ魅力ゆえといえるのではないでしょうか。
解説
本作には様々な要素が描かれているため、一つに絞るのは難しいのですが、今回、着目したいのは、映画館における身分格差の描写。
昨今では、『ジョーカー』(2019)や『パラサイト 半地下の家族』(2019)など、立て続けに「身分格差」がテーマとなった作品が公開され、現実の社会でも感染症の蔓延を発端に、それらの問題が、より浮彫りになっている現状があります。
本作は一見、そのような題材とは程遠いように見えますが、実は裏テーマとして描かれているのが、まさしく映画館における身分格差の描写。
大衆層が集まる1階、富裕層が集まる2階。
本作に登場する映画館"シネマ・パラダイス"は2階建てになっており、それぞれの身分に合わせて、上下に観客が分かれています。
お金持ちの男性が下の階に唾を吐き、下の階の観客が泥を投げつける。
民衆が立ち上がる映画が上映されると、下の階で歓声が沸き起こり、上の階では苦い顔をしている。
このように、二つのフロアで起きる出来事が随所随所で挟まれ、3時間弱ある本作の完全版では、これらの描写が主人公の恋愛にも影響してくることになるのです。
普遍的な名作との呼び声が高い本作ですが、その理由には、現在にも繋がるこれらのシーンの数々が挙げられるのです。
また、豪華な製作陣にも注目してほしいところ。
アルフレードを演じたフィリップ・ノワレさんは、『地下鉄のザジ』(1960)に出演していたほか、近年、劇場公開もされたアニエス・ヴァルダ監督幻のデビュー作『ラ・ポワント・クールト』(1956)の主演も務めていた名優。
主人公・トトの熟年期を演じたジャック・ベランさんは、ジャック・ドゥミ監督の『ロシュフォールの恋人たち』(1966)、『ロバと女王』(1969)に出演しているなど、フランス映画好きには、たまらないキャスティングとなっています。
そして、音楽を担当したのは、エンニオ・モリコーネさん。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(旧題:ウエスタン)』(1968)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)を含めたセルジオ・レオーネ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」、 クエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』(2015)でも名曲を手掛けており、本作の楽曲では、観客を自然と感傷に浸らせてくれます。
映画館という存在
本作では、映画館という存在の偉大さも描かれていました。
身分に関わらず、様々な人々が集まり、同じ時間・同じ作品を共有するという特殊な場である「映画館」
それは、大切な思い出であり、忘れたくない「記憶」の断片でもあります。
しかし、時が経つにつれて、風化され、失われてしまうのが「場所」というもの。
本作では、その切なさや悲しさも描かれていました。
僕自身も、大切な映画館を失った経験があります。
兄と母を連れてアニメの3本立てを見たり、特撮ヒーローと握手をするために長蛇の列を並んだ三宮東映プラザ
夏のアニメ映画を見るときは、いつもここと決めていたOS三劇
家族4人で『ターミネーター3』を見に行って、終わった後、静かな沈黙が訪れたOS阪急会館
そして、ジャンプアニメと東映のヒーロー映画が公開されるたびに母と通っていた三宮シネ・フェニックス
そのどれもが、いまやなくなってしまい、当時の記憶は少しずつ薄れつつあります。
場所がなくなることは、記憶がなくなることのようにも感じます。
しかし、失われた映画館を元に戻すことは出来ません。
たとえ、振り返ることがあっても、今できることは、今ある場所を大切にしていくことでしょう。
様々な人々が集まり、同じ時間・同じ作品を共有するという特殊な場である「映画館」
そんな場所の大切さを、今だからこそ、改めて考えていきたいです。
今回の小道具
こちらは、かつて映像系の大学のオープンキャンパスに行った際、もらった本物のフィルムケース。中には、それ以降、鑑賞した映画の半券がすべて入っています。
『ニュー・シネマ・パラダイス』観ました。
— Tetsuki Ohya (@tetsulikemovies) 2019年8月27日
幼少期に観たものの、すっかり記憶から抜け落ちていた第二部以降が、今の自分に刺さりすぎて、別の映画を観た気分になりました。笑 pic.twitter.com/QBQX0qJCN3
おわりに
長々と長文を読んでいただき、ありがとうございました。
今回、紹介した傑作『ニュー・シネマ・パラダイス』は、現在、以下の劇場にて、絶賛上映中。
貴重なリバイバル上映、ぜひ、今だからこそ、映画館で体感していただきたい一作です。
元町映画館さん
(6/12上映終了 貴重な35mmフィルム上映)
OSシネマズ ミント神戸さん
(上映終了日未定)
109シネマズHAT神戸さん
(上映終了日未定)
アースシネマズ姫路さん
(6/25上映終了)
CINEMACTION 豊劇 豊岡劇場さん
(6/11上映終了)
『トイ・ストーリー5』観ました。
『トイ・ストーリー5』ネタバレあらすじ
感想(ネタバレあり)
"クイーン"の名曲に酔いしれる”予告編”特集/『ボヘミアン・ラプソディ』公開記念
どうも、tetsuです。
本日、11月9日。ついに、伝説的ロックバンド<クイーン>と、そのボーカルである<フレディ・マーキュリー>さんの偉業を描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』が公開されました。
というわけで、ただいま業界各所が<クイーン>の名曲の数々や、彼らに影響を受けた様々なアーティスト、はたまたカバーされた多くの楽曲の数々を特集していますが、映画好きの僕は思いました...。
「クイーンに影響を受けた映画の予告編が特集されていない...!!」
そんなこんなで、今回は「クイーンの名曲に酔いしれる”予告編”特集」と題しまして、彼らの楽曲が使われた昨今の予告編たちを集めてみました!
それでは、さっそくいってみましょう!!
クイーンの名曲に酔いしれる”予告編”特集
『Bohemian Rhapsody』
『スーサイド・スクワッド』より
『LIFE!/ライフ』より
言わずと知れた名曲。最新作の表題曲にもなっているこの曲は、ここ最近公開された2作品の予告編で使われておりました。
『スーサイド・スクワッド』は、スーパーマンやバットマンを生み出したDCコミックスの実写映画。悪役軍団が戦うアクション映画で『Bohemian Rhapsody』がフィーチャーされた予告編の人気により、急遽、追加撮影を敢行。ダークだった作風をポップに編集し直したのだとか…。
もともと、ダークでシリアスな作風だったDCコミックス実写映画シリーズ。今では、カラフルでポップな作品が増えてきていますが、その傾向は、この作品から始まったと言えるのかもしれません。
もちろん本編でもしっかり使われています。
一方『LIFE!』は妄想癖のある主人公が世界を旅するファンタジー映画。予告編では、空想の世界に入りがちな彼を象徴する一曲として使用されていました。そのシーンを観た時、見事な演出にテンションが爆上がりしたのに、実際、本編を観ると全く登場しなかったという衝撃。笑
さすがに、これには少し肩透かしをくらいました…。泣
『Don't stop me now』
「ハードコア」より
個人的には昔、お酒のCMで使われていたのも印象的だった一曲。僕ら若者世代では、ネットでの空耳動画などで知っている人が多いかもしれません。ちなみに僕の高校時代、体育会の女子のダンスは、この曲がBGMとして使われていました。
『ハードコア』は、全編主人公の主観映像で進んでいく、いわゆるPOV(Point Of View)のバイオレンスアクション映画。爽快感のある音楽と映像が見事にシンクロした予告編が見事です。
本編でもこの曲はしっかり登場!クライマックスに壮絶なバトルシーンが待っているのですが、そのシーンを盛り上げるBGMとして曲が流れます。この場面のスッキリ度合いは半端なく、もはやゲームをプレイしているようでした。笑
ちなみに、本作の原案となったのは「biting elbows」というロシアのロックバンドのミュージックビデオ!!
クイーンの名曲が見事にシンクロしたのも確かに納得ですね!
Biting Elbows - The Stampede (Official Music Video) - YouTube
Biting Elbows - 'Bad Motherfucker' Official Music Video - YouTube
『killer queen』
「アトミックブロンド」より
long ver.
"クイーン"にとっては、彼らのブレイクに繋がった初期の名曲の1つ。今回公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』でも、彼らのサクセスストーリーは、この曲から始まっていきます。
『アトミック・ブロンド』はドイツを舞台に女性スパイが活躍するアクション映画。予告編では楽曲のタイトルにピッタリな主人公が魅せるスタイリッシュなアクションシーンが印象的でした。
しかし、本編では、この楽曲の使用はなし。期待したファンは、どれほど落胆したことでしょう。笑
ちなみに申し訳程度クイーンの別楽曲『under pressure』は流れます。笑
『Flash』
「フラッシュ・ゴードン」より
これに関しては、もはや昨今の曲ではないのですが、クイーンの楽曲を使った予告編としては書かせないので、お許しを。笑
『フラッシュ・ゴードン』は、新聞連載漫画が原作のヒーロー映画。しかし、評価が散々になってしまったという中々の問題作で、今では一部ファンの熱狂的な支持を集めるカルト映画として知られています...。
ちなみに、主演を務めたサム・J・ジョーンズさんは、本作で第1回ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞にノミネートされたんだとか...。笑
予告編でも印象的な楽曲は本作のテーマソングなので本編OPにもしっかり登場!!
というか本作、音楽をクイーンが担当しているので、クイーンの音楽を使った映画としては外せない作品となっています。
この作品のサウンドトラックは、歌わないだけで、完全にクイーンのアルバムといっても過言ではありません。笑
作品としての評価はイマイチかもしれませんが、クイーンの楽曲を最も使っている映画として、ファンは必見の作品と言えるのかもしれません。
というわけで、クイーンの楽曲を使った5作品の予告編を紹介いたしました。
しかし、 まだまだ、これだけじゃない。笑
予告編には登場しませんが、劇中、印象的なシーンで登場するクイーンの楽曲は数知れず。
そんな作品もちらっとご紹介します。
番外編
クイーンの名曲が印象的な本編シーンの数々
『We will rock you』
「ピクセル」より
その1
その2
こちらでは、序盤とクライマックスの重要シーンのBGMとして登場!!
「ロック・ユー!」より
伝説の”ジョーカー”役で歴史に名を刻んだ故ヒース・レジャーさんの主演作でも。
『Flash』
「テッド」より
先ほど紹介した『フラッシュ・ゴードン』のオマージュネタとして登場。
あのラズベリー賞ノミネート俳優も登場します。
『Brighten rock』
「ベイビー・ドライバー」より
もうこのシーンは本作のハイライトといっても過言ではないでしょう。
それぐらいこのクライマックスシーンはキマっていました。
今でもなお数多くの映画に影響を与える"クイーン"の楽曲。
僕たちは、伝説のボーカル"フレディ・マーキュリー"さんの死後に生まれた世代ではありますが、こうやってみると、様々な作品から彼らの楽曲に触れてきた世代でもあります。
本日公開された『ボヘミアン・ラプソディ』では、そんな彼らの活躍が多くの楽曲とともに描かれていきますが、そのメロディの数々は若者世代にも響くはず!!
青春時代”クイーン”と共に育った親世代のみならず、僕たち若者こそ観ておきたい一作。ぜひ、紹介した作品を思い出しつつ、楽しんでいただきたいです‼
拙い文ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!!
P.S
にわかファンの文になりますので間違っているところもあるかもしれません。あらかじめご了承ください。
ところで、"MARVEL"って何?!
今回は、これからの僕の記事で、ほぼ出てくるであろう案件w
について、知らない方のためにもサクッと紹介しちゃいますね!!
遡ること、1939年!
アメリカ合衆国において、ある漫画出版社が誕生しました!!
その名も"Timely Comics(タイムリー・コミックス)"
マーティン・グッドマンさんが社長となり、
甥で編集担当のスタン・リーさんと共に発足した、この会社は、
後の1957年、
現在の"Marvel Comics(マーベル・コミックス)"
となりました!!
(スタンリーさんはこんな感じ!彼の口癖は「エクセルシオール!!(向上せよ!!)」
それでは、マーベルコミックスとは、
どんなマンガを出版していたかというと、
こんな感じ!
(初期のアイアンマンとスパイダーマンのイメージ)
つまり、日本で言う「週刊少年ジャンプ」のように、少年向けの"ヒーローマンガ"を書いていたわけですね!
とはいえ、
日本の雑誌とは、その形態が違いまして、
ジャンプのように色々な作品が一つにまとまっているのではなく、1つの作品につき、一つの本という風に、ページ数が少なかったりします。
(海外では、その形態を"comic book"というのですが、日本では"リーフ"と呼ばれているそうです。)
(ジャンプが約460ページあるのに対し、リーフはたったの約32ページ!!)
参照:現代アメコミの基礎知識
おっと、話が逸れてしまいましたね。
そんなマーベル、
今では実写化作品が大量に製作されていまして...、
先程のヒーロー達は、今では、こんな感じに!!
(実写版のアイアンマンとスパイダーマン)
こちらの動画から拝借。
映画『スパイダーマン:ホームカミング』日本語吹替予告編 - YouTube
ちなみに現在、
映画シリーズでは、先程のアイアンマン、スパイダーマンなどが活躍する
マーベル・シネマティック・ユニバース(通称:MCU)や、
ミュータントと呼ばれる特殊能力者が活躍する
X-MENシリーズ
などなど、様々なシリーズが展開しているんですね~!
近年では、それぞれのシリーズがアクションというジャンルに囚われず、
社会派サスペンス風になっていたり、
ロードムービーの様な趣きになっていたり、
と、ひとつの"ジャンル"といっても過言ではないほど、その映画群は拡大しつづけています!
というわけで、
サクッと"マーベル"について、
説明させていただきました!
これで、なんとなくマーベルについて分かった!
興味を持った!
という方が増えてくれれば、幸いです!
これからは、
そんなMARVELが手掛けた数々のドラマシリーズの感想を書いていきたいと思います!
是非とも、そちらも読んでいただければ嬉しいです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
初めまして!tetsuです!
初めまして、
tetsu
と申します!
映画が大好きで、
これまではFilmarksという映画の感想共有サイトで感想を書いていたのですが、
少しずつ、ドラマや映画のまとめ記事についても書きたくなりまして、
この度、ブログを開設してみることにしました!
未熟者では、ありますが、
少しづつ記事を書いていくつもりなので、
どうかお手柔らかによろしくお願い致します。